動画制作の見積もりを比較するとき、いちばん多い失敗が「総額だけを並べて安い会社を選ぶ」ことです。例えば同じ「採用動画を1本」という依頼で、30万円・60万円・90万円と開く。3倍の差は珍しくありません。
私は見積もりを出す側の映像ディレクターです。金額が違う理由はほぼ決まっていて、安い見積もりは何かが「入っていない」だけ。この記事では、見積書の内訳の読み方と、相見積もりで揃える7項目をまとめました。そのまま使える比較表つきです。
動画制作の見積もりを総額で比べると失敗する理由
見積書は、同じ商品についた値札ではありません。会社ごとに「何をどこまでやるか」の前提が違います。
この例で言えば、30万円の見積もりには企画費が入っていない。60万円には修正2回までの条件がつく。90万円には構成案の提案と修正無制限が含まれる。金額順に並べれば「安い順」ですが、中身は別の商品です。
安いほうを選んで、構成は自分たちで考え、3回目の修正から追加費用を払い、最終的に80万円に着地。よくある流れです。比較するなら、前提を揃えてからです。
見積書の内訳|企画・撮影・編集・その他の4ブロック
動画制作の見積書は、項目名が会社ごとに違っても、中身は4つのブロックに分けられます。まずここに当てはめて読んでください。
| ブロック | 主な項目 | 目安(1〜3分の実写動画) |
|---|---|---|
| 企画・構成 | ヒアリング、構成案、台本、絵コンテ | 5万〜30万円 |
| 撮影 | ディレクター・カメラマンの人件費、機材、ロケ費 | 5万〜20万円/日 |
| 編集・仕上げ | カット編集、テロップ、BGM、色調整、MA | 10万〜50万円 |
| その他 | ナレーション、出演者、交通費、スタジオ代 | 実費〜数十万円 |
企画・構成
この欄が0円、あるいは項目そのものが無い見積もりは要注意です。構成を考える工程が省かれているか、発注側が用意する前提になっています。
動画の出来は構成で8割決まります。「撮って編集するだけ」の見積もりは安く見えますが、何を撮るかを決める仕事が、そっくり自社に残ります。
撮影
金額は日数と人数で決まります。「撮影1日」と書かれていても、半日なのか日没までなのか。スタッフが1人なのか3人なのかでも別物です。
撮影時間が短いと、撮れるカットの数が減ります。編集で「素材が足りない」となったとき、追加撮影の費用がいちばん大きい。ここは日数より「何を撮るか」で判断してください。
編集・仕上げ
尺と表現の量で変わります。テロップの有無、BGMの権利処理、色調整、ナレーションのMAまで含むのか。「編集一式」の一言に何が入っているかを聞いてください。
その他
出演者のギャラ、ロケ地の使用料、遠方の交通費。見積もり時点では未確定になりやすく、あとから乗ってくる費用の代表格です。
動画制作の見積もりを比較する7項目(比較表テンプレート)
相見積もりを取ったら、金額を見る前にこの7項目を横に並べます。空欄が多い会社ほど、あとから費用が動きます。
| 項目 | 確認すること | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|---|
| 1. 企画の範囲 | 構成案・台本まで含むか、提案は何案か | |||
| 2. 撮影体制 | 日数、時間、スタッフ人数 | |||
| 3. 編集の範囲 | 尺、テロップ、BGM、色調整、MA | |||
| 4. 修正の条件 | 無料は何回まで、超えたらいくらか | |||
| 5. 素材と出演者 | 支給素材の扱い、社員出演か、キャスト手配か | |||
| 6. 納期と進行 | 初稿まで何日、確認は何回、窓口は誰か | |||
| 7. 使用範囲と権利 | Web、説明会、広告、展示会まで使えるか |
この表はExcelでも用意しました。社名を書き換えて、そのまま使ってください。
表にすると、金額以外の欄が埋まらない会社が必ず出てきます。そこが質問のスタート地点です。
特に差がつくのは「修正の条件」と「使用範囲」
7項目の中で、金額差にいちばん直結するのがこの2つです。
修正は、初稿を見てから「ここを変えたい」が必ず出ます。無料が1回までの契約なら、2回目以降は1回ごとに追加費用がかかります。完成までに3回直せば、その分が見積もりに上乗せされます。
使用範囲は見落とされやすい項目です。「Webサイト掲載のみ」で作った動画を説明会や広告で流すと、追加の使用料を請求されることがあります。最初から使う場所を全部伝えておきましょう。
安い見積もりで削られやすいもの
見積もりを出す側の立場で言うと、金額を下げる方法は限られています。削られるのは、たいてい次の4つです。
企画費:構成は発注側が考える前提になる
企画費を抜けば、その分だけ金額は下がります。その代わり「何を、どの順番で見せるか」を自社で決めることになります。撮影当日に現場で構成を考え始めて、時間切れになる。企画を省いたときに起きやすい失敗です。
撮影時間:半日で撮り切れる範囲しか撮らない
半日撮影は、社員インタビュー2名とオフィスの様子を撮るのが限界です。「工場の作業風景も」「外観も」と広がると、素材が足りないまま編集に入ります。
修正回数:初稿後1回まで、以降は有料
修正回数を絞ると、制作会社は工数を読めるので安く出せます。ただ、発注側は「1回で直しきれるか」の不安を抱えたまま初稿を待つことになります。
使用範囲:Web掲載のみ、他媒体は別途
BGMや出演者の権利を「Web限定」で処理すると安くなります。あとから説明会や広告で使いたくなったとき、権利の買い直しが発生するのがこのケースです。
どれも「削ってはいけない」わけではありません。削ったものを自社で補えるなら、安い見積もりは正しい選択です。補えないなら、その分はあとで払うことになります。
追加費用が発生する条件を、見積もりに書いてもらう
追加費用そのものは悪ではありません。問題は「いつ、いくら発生するか」が見積もりに書かれていないことです。
追加費用が出る条件は、ほぼ次の4つに絞られます。
- 仕様の変更(尺・本数・構成を途中で変える)
- 修正回数の超過
- 撮影日の変更(天候、出演者の都合)
- 出演者・ロケ地の追加
「どの場合に、いくら追加になりますか」と聞いて、返ってきた答えを見積書か契約書に書いてもらいます。口頭の「大丈夫ですよ」は、担当者が変わると消えます。
私自身、見積もりには「この条件のときはこの金額が追加」と書くようにしています。書いておいたほうが、制作中の相談がしやすくなるからです。
見積もりを比較する前に、条件を揃える
比較の精度は、依頼の時点でほぼ決まります。3社に違う条件を渡せば、返ってくる見積もりは比較できません。
目的、尺、予算、納期、参考動画、素材の有無。この6点を、全社に同じ文面で渡してください。依頼メールの文例は映像制作の打ち合わせ準備|事前に決める7項目にまとめています。
見積もりが届いたら、内訳を7項目の表に転記。埋まらない欄は質問して埋めてから、はじめて金額を見ます。この順番を守るだけで、比較の質が変わります。
「安い理由」と「高い理由」を、両方聞く
見積もりを見て気になった項目は、そのまま聞いてしまうのがいちばん早いです。
「この金額でできる理由は何ですか」「他社より高いのはどの部分ですか」。両方に説明がつく会社は、自分たちの見積もりの根拠を理解しています。答えが「頑張ります」だけなら、制作中も同じ返事が返ってきます。
KANDOUの見積もりの考え方
参考までに、KANDOUが見積もりを出すときに決めていることを書いておきます。
- 概算は企画・撮影・編集・オプションの4区分で出す(料金シミュレーターと同じ区分)
- 構成案は契約前に提示する。何を作るか見えない状態で、金額だけ出さない
- 修正は回数制限なし。納得してもらえるまで直す(※ナレーションの修正や、3DCG・VFXなど特殊な編集は別途費用になる場合があります)
- 企画から撮影・編集まで、一人のディレクターが担当する。人が変わるたびに説明し直す手間が無い
概算は料金シミュレーターで、動画の種類・尺・撮影日数を選ぶだけで出せます。採用動画なら企画込み・撮影1日で25万円〜。まず数字の感覚をつかんでから、相談してもらって構いません。
よくある質問
Q. 相見積もりは何社に取ればいいですか?
3社が目安です。2社だと比較の軸ができず、5社を超えると条件を揃える手間のほうが大きくなります。
Q. 見積もりは無料ですか?
多くの制作会社は無料です。KANDOUも初回相談と見積もりは無料。ただし、構成案の作成まで無料に含むかは会社によって違うので、先に確認しておくと安心です。
Q. 見積もりをもらったあとに断っても大丈夫ですか?
問題ありません。相見積もりは、制作会社側も前提にしています。断るときに理由を一言添えると、次に相談するときの関係が残ります。
Q. いちばん安い会社を選んではいけませんか?
安いこと自体は問題ありません。7項目が埋まった上で安いなら、それが最良の選択です。埋まらない欄がある安さは、あとで払う金額がまだ決まっていないだけです。
まとめ:動画制作の見積もり比較で押さえる3点
見積もりを並べる前に、この3つだけ確認してください。比較表はこちら(Excel)からダウンロードできます。
- 内訳を4ブロックに分けて読む(企画・撮影・編集・その他)
- 7項目の比較表を埋めてから、金額を見る
- 追加費用の条件を、見積書に書いてもらう
採用動画の費用感と進め方は大阪で採用動画を制作するなら、制作会社の実績の見方は大阪の映像制作会社選び|実績の読み方で解説しています。
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